離婚しただけで、在留資格が自動的に「定住者」に変わるわけではありません。一方で、出入国在留管理庁は「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」から定住者への変更について、許可された事例と認められなかった事例の両方を公表しています。離婚という出来事だけで結論を出すのではなく、その人の在留状況や日本で暮らす必要性などを踏まえた判断になります。
この先の生活が気になると、まず「住み続けられるか」という答えが欲しくなると思います。考える順番としては、現在の資格を確かめ、これまでの暮らしと離婚後の生活を整理するところから始めると、問題を捉えやすくなります。
まずは現在の在留資格と、離婚後の生活を整理する
この記事で扱うのは、日本人または永住者の配偶者として「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」で在留している人が、離婚後に定住者への変更を検討する場面です。まず在留カードで、現在の在留資格と在留期間を確認してください。
そのうえで、「婚姻関係がどう変わったか」と「これから日本でどのように暮らすか」を分けてメモしてみることを勧めます。離婚の成立日だけでは、同居していた時期や別居の事情、現在の仕事、子との生活までは伝わりません。出来事と現在の暮らしをつなげて説明できるようにする、という準備です。
定住者への変更は、離婚届の提出だけでは決まらない
入管庁の定住者案内では、対象を「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」と説明しています。離婚した人に一律に与えられる資格、という説明ではありません。
また、在留資格の変更や在留期間の更新を検討する際は、入管庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」も確認しておくとよいでしょう。その判断では、申請者が行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性などを総合的に考慮すると説明しています。
ここが、自動的な変更ではない理由です。「離婚した」という一つの事実だけでなく、それまでどのように在留し、今後どのような生活を送るのかが問題になります。
生活基盤は、収入の数字だけで考えない
同ガイドラインは、生計について、世帯単位で安定した生活が見込まれるかという考え方を示しています。また、公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由があれば、その理由を十分に勘案して判断するとしています。
したがって、準備の段階では月々の収入だけを抜き出すより、誰と暮らし、どのように生活費を支え、今後の暮らしをどう見込んでいるかを整理するほうが、生活の全体像を説明しやすくなります。これは説明を整えるための助言であり、特定の収入や支援があれば許可されるという意味ではありません。
公表されている許可・不許可事例は、結論の保証ではない
入管庁は、「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への変更が認められた事例と、認められなかった事例を、日本語などのPDFで公開しています。定住者の案内ページからも、この事例資料をたどれます。
ただし、今回の提供資料に含まれるのは事例の掲載案内までで、PDF内の個々の事情は含まれていません。そのため、ここで特定の婚姻期間や子の監護状況を挙げて「この事情で許可された」と紹介することはできません。
公表事例を読む際は、結果だけでなく、その事例に記載された事情をひとまとまりで見ることが大切です。婚姻期間など一つの共通点だけを取り出して、自分も同じ結果になると考えるのは避けたいところです。ガイドラインも、代表的な考慮事項を満たしていても、すべての事情を総合的に考慮して許可しない場合があると説明しています。
自分の事情は、時系列と現在の暮らしでまとめる
準備の方法として、次の観点でメモを作ることを勧めます。これは必要書類や審査基準の一覧ではなく、自分の事情を説明するための整理項目です。
- 婚姻・同居・別居・離婚の時期と、それぞれに至った経緯
- 子がいる場合の同居状況、日々の世話、生活費の負担
- これまでの在留歴と、現在の仕事・住まい・生活費の見通し
- 説明したい出来事と、その内容を確かめられる手元の資料
たとえば、仮に別居から離婚まで時間が空いているなら、日付だけでなく、その間にどこで誰と暮らしていたかを添えると経過が伝わりやすくなります。分からない日付は無理に埋めず、「おおよそ」と分かる形で残し、資料で確かめるとよいでしょう。
変更後も、在留期間と生活の記録を管理する
定住者への変更が認められた後も、管理は続きます。定住者は一定の在留期間を指定して認められる資格です。許可後は在留期間を確認し、申請書や提出資料の控えを保存して、その後の生活の変化も記録しておくことを勧めます。次の更新時に、以前の説明と現在の状況をつなげやすくなります。
なお、ガイドラインには、定住者告示などに該当して上陸を許可され在留している人について、入国後に年齢や扶養状況が変わり要件に適合しなくなっても、それだけで直ちに更新不許可になるわけではないとの説明があります。これは、そのような人の更新に関する説明であり、離婚後の定住者への変更が認められるという意味ではありません。
離婚後も日本で暮らす道として、定住者への変更が認められた公表事例はあります。ただし、離婚だけで資格が切り替わるのではなく、在留の経過や生活状況、在留の必要性などを踏まえた個別判断です。まずは婚姻から現在までの経過と、これからの生活を具体的に整理すること。それが検討の土台になりますが、その整理だけで個別の審査結果を断定することはできません。

