契約書レビューを依頼するとき、契約書のほかに何を伝えればよいのでしょうか。まず整理したいのは、取引の目的、自分の立場、金額・期間、相手との関係、そして「特に避けたいこと」です。必要に応じて、見積書や仕様書などとの照合も検討します。
条文の意味が分かることと、その条件で取引を進められることは、少し違います。難しい法律用語で説明する必要はありません。「この条件だと、仕事をどう進めることになるか」を伝える準備が、取引に合った確認につながります。
同じ条項でも、立場と目的で確認点が変わる
たとえば、「30日前の通知で契約を解約できる」という説明用の条項を考えてみます。この一文だけで、都合のよい条件かどうかは決められません。
受託者が最初に設備費を負担したり、専任の人員を確保したりする取引なら、短期間で終了したときに費用を回収できるかが気になります。一方、発注者なら、終了までに業務を引き継ぎ、成果物を受け取れるかが確認点になります。
Ark Legalのサービス案内でも、このように立場や初期投資を踏まえて確認する例が示されています。「解約条項を見てほしい」だけでなく、「準備費用が先にかかるため、早期終了が心配」と伝えると、確認してほしい負担が具体的になります。
依頼前に整理したい五つの取引情報
長い説明資料を作るより、次の五つを短いメモにすることをお勧めします。まだ決まっていない部分は、未定のまま区別しておけば十分です。
- 目的と契約の種類:何を依頼・提供する取引で、何のために契約書を使うのか。
- 自分の立場:発注側か受注側か。誰が作業し、誰が費用を負担するのか。
- 金額と期間:契約金額、支払時期、実施期間、先に必要になる費用は何か。
- 相手との関係と現在地:相手から提示された文書か、自社のひな形か。提示前、調整中、締結直前のどの段階か。
- 譲れない条件と心配事:維持したい条件と、特に避けたい事態は何か。
「不利な条項」より、困る場面を言葉にする
「不利なところを全部見てほしい」という希望に、もう一歩だけ説明を足してみましょう。仮に制作業務を受注するなら、「作業が増えても報酬が変わらない状態を避けたい」「納品後にどこまで対応するのか整理したい」といった伝え方が考えられます。
発注側なら、「受け取る成果物の範囲をはっきりさせたい」「契約終了後も業務を続けられるようにしたい」などです。条項名が分からなくても、守りたい仕事の進め方は説明できます。
見積書や仕様書は、契約書との照合候補にする
契約書とは別に、見積書や仕様書などで業務内容を整理している場合は、その存在も伝えるとよいでしょう。資料を一度に大量に送るのではなく、どの資料まで確認対象に含めるかを先に相談するのがお勧めです。
照合を頼む観点としては、見積書に記載した作業範囲と契約書の業務範囲が合っているか、仕様書で予定した成果物と契約書の納品条件がつながっているか、といった点が考えられます。資料の内容を個別に読むだけでなく、「同じ取引について同じことを言っているか」を見るイメージです。
送付する際は、どれが最新版で、どの条件が合意済みかを明記しておくと整理しやすくなります。修正途中の案と確定した条件を混ぜないことも、大切な準備です。
レビューで返る内容と費用を先に合わせる
Ark Legalの契約書レビューは、中小企業・個人事業主向けに全国オンラインで対応しています。簡易レビューは税込9,800円で、確認事項・注意点の整理が中心です。具体的な修正文案が必要な場合は、修正提案付きレビューという別のプランがあります。
「気になる点を知りたい」のか、「どのように直すかまで検討したい」のかで、必要な成果物は違います。依頼前に、結果として何を受け取りたいかも伝えておきましょう。文書の分量、追加作業、再レビュー、納期の条件は、同サービスでは依頼内容を確認してから個別に案内されます。
最初は情報を整理し、対応範囲と費用を確認する
初回は文書を添付せず、契約の種類・利用目的・自分の立場・気になる点を伝える進め方ができます。特に情報の取扱いを先に確認したい場合に適した方法です。これは添付が一律に禁止されているという意味ではありません。
同サービスでは、対応可否と必要な支援を確認してプラン・費用を案内し、内容と費用への納得、お支払いを経てレビューを開始します。必要な背景情報と資料を確認したうえで作業を進め、結果はメールで届きます。締結予定日がある場合は、着手前に伝えて日程を確認しておきましょう。
AIは整理の補助、人が指摘を確認・選別する
同サービスは、条項の抽出や確認候補の整理、修正候補の比較などにAIを補助利用します。そのうえで、行政書士が取引条件を踏まえ、必要な調査を行い、指摘内容を確認・選別して結果を返す仕組みです。
AIを使うかどうかだけでなく、「何を入力し、誰が結果を確かめるか」が確認のポイントです。個人情報保護委員会も生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。文書を外部に送る前に、個人情報や秘密情報の取扱い、AIへの入力範囲、学習利用・保存・削除の条件、社内規程や守秘契約との整合を確認することをお勧めします。
AIを利用していることだけで個別のレビューサービスの適法性を判断せず、依頼する業務の範囲を確かめておきましょう。
結果を受け取った後まで見据えて準備する
レビュー結果を受け取ったら、相手に確認する事項、修正を検討する事項、自分で管理する事項に整理すると使いやすくなります。契約締結後に備え、更新や解約の通知時期、契約終了時の引継ぎなどは、最終版の内容に沿って担当者と管理方法を決めておくことをお勧めします。担当者が替わっても分かる形で残すのがポイントです。
なお、紹介したサービスは契約の安全性や将来のトラブル防止を保証するものではなく、締結前の判断材料を整理するものです。
依頼前に用意したいのは、立派な説明文ではありません。「何の取引か」「自分は何を負担するか」「何を守りたいか」が分かるメモです。契約書に取引の背景と必要な関連資料を添えることで、抽象的な条文の確認を、今回の仕事を進めるための具体的な検討につなげられます。

